業務命令による転勤の引っ越しなので会社が全額出してくれるかと思いきや、そうではないケースもあります。こんなことなら不用品を処分して荷物を減らしておけばよかった、高いオプションサービスを頼むんじゃなかった、なんて声もあちこちで聞かれます。引っ越し料金に限らず、社宅や休暇などの取り決めも企業によりかなり違いがあるようです。
すべては社内規定の条文に定められている
従業員が常時10人以上いる会社では、労働基準法により社内規定を明確にした就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出る必要があります。始業および終業の時刻、休日、賃金に関する規定は絶対的に記載する必要がありますが、転勤に関する事項は各地に営業所や支店を持つ会社に限られるため、記載は任意になっています。
転勤規定はどうなっているかを確認しよう
福利厚生面は会社の規模や経営状況によりかなりの違いがありますので、自分の会社の転勤に関する規定がどうなっているか、あらかじめ確認しておきましょう。思い込みで動いてしまっては損をしてしまうかもしれません。以下に、よくある事例を紹介します。
転勤辞令はいつまでに出るの?
転勤の辞令が出てから実際に異動するまでの期間はどのくらいでしょうか。一般的には引っ越しを伴わない転勤の場合は、引っ越し準備が不要なため1週間前程度の直前に言われるケースもあるようです。
しかし、通常であれば転勤は引っ越しを伴うことが多く、既婚者で家族の世帯主で学校に通学するような子どもがいる世帯となれば話は別です。アットホームな社風の会社なら、家庭の事情を考慮し半年前に内示があるところもありますが、多くは早ければ3ヶ月前から、通常は2ヶ月や1ヶ月、急なところだと2週間前というところもあります。夫婦2人の世帯や単身の場合は急に辞令が出されるケースもあるようです。
異動日に関しては社内規定というよりも、辞令に「いつまでに着任」と示されることが多いです。転勤の時期も年一回とする会社や随時となっている会社もあるので、異動先の支店に欠員が出た場合などは早急に動かなければならないこともあり、どの程度の期間の余裕があるかはその都度異なるでしょう。
賃貸住宅は自分で探すの?
社宅のある会社なら新居を探す必要がないので楽なのですが、そのぶん辞令が出てから早いうちに動かなければならないことが多いです。たいていは異動先の営業所や支店で適当な賃貸物件の候補をいくつか選んで、間取りをFAXやメールで送ってくれることが多いのではないのでしょうか。
今は、インターネットでの賃貸情報検索サイトもあることから自分で探そうと思えば探せます。ただし膨大な数の中から地名も知らないような住環境もわからない状態で探すよりは、異動先の支店で懇意にしている不動産屋があれば、通勤や通学に便利な環境の良い場所を提示してくれますので、そこからの紹介のほうが早いと言えるでしょう。
この辺に関しては社内規定で明文化しなくても、古くからの慣例や支店や営業所の方針に従うことになりそうです。
現地に下見に行く時の旅費は誰が出すの?
出張旅費規定で、転勤に先立ち支店への挨拶や賃貸物件の下見などに要する旅費は会社負担のケースが多いですが、公共交通機関を使った時の家族全員分の旅費が支給されるのは難しいでしょう。そんな時のために、領収書の提示の必要がない転勤手当や引っ越し一時金として支給されるケースもあります。
遠距離の異動なら現地の支店の人に物件の手配をお願いして、下見ができないことも多いです。
引っ越し業者は自分で手配するの?
引っ越し業者の手配もいろいろなパターンがあります。会社指定の引っ越し業者を1社限定とする場合、会社指定の業者を1社入れて他2社の見積もり書を提出する場合、自分で好きな業者から選び3社分の見積書を出す場合、など様々あります。
引っ越し費用を自分で一部でも負担する必要があるならば、できるだけ安い引っ越し業者にお願いしたいところです。コツとしては、会社に3社の見積もり書の提出義務があるなら、4社以上には見積もりをお願いしておき、その中から自分が頼みたい業者が最安値になるように提出しましょう。
引っ越し費用はどこまで会社が出してくれる?
業務命令の引っ越しなら全額負担とするところや、相見積もりを提出し、金額を見て相場を把握し、いくらまで負担と決める会社もあります。距離など一切お構いなしに単身なら10万円、家族世帯なら25万円の支給と一律に決められている会社もあるようです。
また、自分で希望を出していた転勤が叶えられたような自己都合の場合は、引っ越し料金は全額会社負担とならないこともあります。
らくらくパック等のオプションサービスを頼みたい
引っ越し業者のオプション料金についてはどうでしょうか。なかには、夫婦でフルタイムの共働きともなると、なかなか引っ越し準備や荷造りや掃除まで十分に手が回らないことがあります。そんな時は、食器などの割れ物や本や、差しさわりのない荷物をダンボールに詰めてくれるオプションサービスは利用していいのでしょうか。ペットを連れて行く時の、輸送代やピアノ移動の専門業者を頼む場合の料金は?など、どこまでの規定であるかを確認しておいた方がいいでしょう。
引っ越し料金が全額負担されるものと思っていたら、個人的な都合の有料オプションサービスは除外されることもありますので注意が必要です。
しかし、どうしても時間が取れないようなときは、自己負担でお金を出してでもらくらくパック等のオプションサービスを頼みたいと思う人もいるでしょう。特に子育てをしながら働いている主婦は、毎日の家事で精一杯ですし、妊娠中なら重労働は控えるべきです。念のため、梱包ぐらいは頼めないかを交渉してみても良いかもしれません。となるとオプションサービス料金の安いところが業者を選ぶ際の目安になるかも知れませんね。
引っ越し当日と前後は休暇は取れるの?
社内規定では引っ越し前後の休暇はどういう取り扱いになってるのでしょうか。国内の異動になりますが、引っ越し当日と前後の1日ずつを入れて、合計3日間の特別休暇が与えられたり、土日や有給休暇を利用し1週間程度休めるところなど様々あります。海外転勤などは、もう少し長めに休めるところもあるでしょう。
ただし、異動先の距離や家族構成により、多少は融通がきくことがあるかもしれません。もし、社内規定として条文に盛り込まれていなければ、異動元や異動先の上司にきちんと事前に確かめておくことをおすすめします。欠勤が賞与の査定に響くことがある会社なら、なるべく欠勤扱いにはならないようにしたいですね。
単身赴任手当や帰省の旅費は出るの?
持ち家だったり、子供の受験の時期だったり、家族の介護があったり、と家庭により様々な事情で単身赴任となる場合もあるでしょう。その場合の2世帯住居となる際の手当てや、単身赴任手当などの規定も確認しておきましょう。月1回、赴任地からの帰宅の際の旅費が支給される会社もあります。
まとめ
以上のように転勤の規定は企業により、こと細かに決めているところや大雑把で融通がききやすいところなど様々あります。社会の景気や会社の経営状況により何年かごとに見直すことにもなります。転勤規定は当事者にならないとなかなか確認しない部分ですが、いざという時にあわてて失敗しないためにも、内容をよく把握していない人はぜひ目を通しておきましょう。